なぜマドゥロ体制は続いているのか(C)AFP=時事

 

ふたりの大統領、ふたつの国会

 2019年1月以降、南米の産油国ベネズエラでは、ふたりの大統領が並び立ち、そのどちらを正統な大統領として承認するかで国際社会を二分してきた。ひとりは、「21世紀の社会主義」と反米主義を掲げた故ウーゴ・チャベス大統領の後継者ニコラス・マドゥロ、もうひとりは反チャベス派勢力を代表するフアン・グアイド国会議長だ。

 マドゥロが再選したと主張する2018年5月の大統領選は、反チャベス派政党および有力候補のほぼすべてが排除されたうえで強行されたマドゥロ勝利の出来レースであった。そのため反チャベス派は、マドゥロ政権一期目の任期終了により正統に選出された大統領は不在となったとの認識のもと、憲法規定に基づきグアイド国会議長が暫定大統領に就任した。米国、EU諸国、カナダ、日本など50カ国以上がそれを支持する一方、中国、ロシア、キューバ、イランなどがマドゥロを正統な大統領として支持した。

 以来、3年が経とうとしているが、この膠着状態は未だ続いたままだ。

マドゥロが「ポスト」で買った軍の支持

 ベネズエラはハイパーインフレに襲われ、2014年以降わずか6年でGDPが2~3割にまで縮小するという未曽有の経済危機に直面している。食料や医薬品不足で命を落とす人が続出し、生活苦から500万人がコロンビアやブラジルなど南米諸国に脱出、ベネズエラはシリアに次いで世界で2番目に多い難民を出す国となった¹

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