「ふたりの大統領」が対立して3年、ベネズエラはいまどうなっているのか

執筆者:坂口安紀 2021年12月29日
カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
エリア: 中南米
なぜマドゥロ体制は続いているのか(C)AFP=時事
ベネズエラで「ふたりの大統領」が対峙するようになり、まもなく3年が経つ。政治ポストの分配などで軍をおさえるマドゥロに、有効な手立てを打ち出せない「暫定大統領」のグアイド。市民の間には政治的無力感が広がっている。

 

ふたりの大統領、ふたつの国会

 2019年1月以降、南米の産油国ベネズエラでは、ふたりの大統領が並び立ち、そのどちらを正統な大統領として承認するかで国際社会を二分してきた。ひとりは、「21世紀の社会主義」と反米主義を掲げた故ウーゴ・チャベス大統領の後継者ニコラス・マドゥロ、もうひとりは反チャベス派勢力を代表するフアン・グアイド国会議長だ。

 マドゥロが再選したと主張する2018年5月の大統領選は、反チャベス派政党および有力候補のほぼすべてが排除されたうえで強行されたマドゥロ勝利の出来レースであった。そのため反チャベス派は、マドゥロ政権一期目の任期終了により正統に選出された大統領は不在となったとの認識のもと、憲法規定に基づきグアイド国会議長が暫定大統領に就任した。米国、EU諸国、カナダ、日本など50カ国以上がそれを支持する一方、中国、ロシア、キューバ、イランなどがマドゥロを正統な大統領として支持した。

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執筆者プロフィール
坂口安紀(さかぐちあき) アジア経済研究所地域研究センター主任調査研究員。1964年生まれ。国際基督教大学卒、カリフォルニア大学ロスアンジェルス校(UCLA)ラテンアメリカ研究学MA(修士)。専門はベネズエラ地域研究。著書に『ベネズエラ:溶解する民主主義、破綻する経済』(中公選書 2021年)、編著書に『チャベス政権下のベネズエラ』(アジア経済研究所2016年)、『途上国石油産業の政治経済分析』(岩波書店2010年)など。『ラテンアメリカ・レポート』などでベネズエラ情勢について定期的に情報を発信している。
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