Weekly北朝鮮『労働新聞』
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駐北朝鮮ロシア大使の急逝で金正恩が異例の弔問(2025年12月7日~12月13日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年12月15日
エリア: アジア
金正恩は在朝ロシア大使館に自ら出向いて弔問した[12月6日に急逝したマツェゴラ駐北朝鮮ロシア大使(中央)=2025年6月19日、北朝鮮・平壌](C)EPA=時事
10年以上にわたり駐朝大使を務めたアレクサンドル・マツェゴラの死は、ロ朝蜜月を反映し外国の外交使節団としては破格の扱いで報じられた。党中央委員会全員会議が開催され金正恩が「司会」、第9回党大会の開催は来年1月が見込まれる。ロシア・クルスク州での任務から帰国した第528工兵連隊の歓迎式典が大きく報じられた。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 

5カ年計画は「完遂」との評価

 12月9日から11日にかけて、朝鮮労働党中央委員会第8期第13回全員会議拡大会議が開催された。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席のうえ「司会」した。議題は、①2025年度の党及び国家政策執行状況総括について、②党中央検査委員会の2025年度事業状況について、③党第9回大会準備に関連した重要問題について、④2025年度国家予算執行状況と2026年度国家予算案について、⑤組織問題の5議題であったが、最後の「組織問題」すなわち人事については、党中央委員会の委員1名、委員候補5名を解任するに留まり、大規模なものは年明けの党大会会期中に実施されるものと考えられる。

 第1議題、第2議題については概括的にしか報じられず、具体的な内容は明らかにされなかった一方、第3議題の党大会準備については、党大会準備委員会の構成と分科・部門別小組の組織構成、党規約改正案の作成、代表者の選出方法などに話題が及んだとされる。今後、各地での党代表会開催や党大会代表選出について報じられることになろう。

 金正恩は、第1、第2、第3議題に対して、「今年度の事業に対する総評は、加速化された前進速度、倍加された自生力だ」といった綱領的な結論を述べた。「自生力」は初出である。農業部門では「昨年よりも高い穀物収穫量を記録」したとされ、5カ年計画は「完遂」との評価が下された。国防やスポーツ分野でも成果が豪語され、「一年を壮大な成果で飾った秘訣は、思想の旗印を高く掲げた」からだとした。

 現段階で第9回党大会の開催日程は明らかにされていないが、党中央委員会全員会議が12月11日に閉幕したことから考えれば、来年1月の開催が見込まれる。党大会では、新たな5カ年計画の策定や金正恩演説での対外関係発言に加え、党規約の改正内容や人事も注目点となる。また、党大会後に最高人民会議が開催されるのが本来の姿であるが、代議員選挙については昨年3月に実施されるはずであったにもかかわらず全く音沙汰がない。2023年8月の改正選挙法では、代議員候補者の選定で部分的な競争原理が導入されたが、実際にそのような運用がされるのかも含めて見守っていきたい。

第528工兵連隊の死者は9人

 13日付は、党中央軍事委員会の命令を受けて海外作戦地域に出征した朝鮮人民軍の第528工兵連隊が帰国したことを歓迎する式典が、平壌(ピョンヤン)の4.25文化会館広場で開催されたことを4ページかけて大きく報じた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治外交。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、『北朝鮮を読み解く』(時事通信社)、共著・編著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)、『北朝鮮を解剖する』(慶應義塾大学出版会)など。
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