外務次官時代の秋葉氏(C)AFP=時事
 

 台湾危機が現実味を増すにつれ、注目を集めずにはいられないのが日本の安全保障を担う国家安全保障局(NSS)の対応力だ。

 2014年1月、国家安全保障会議(NSC)の事務局として発足したNSSは、谷内正太郎元外務次官、北村滋元内閣情報官と、外務省出身者と警察庁出身者が交互に局長を務めてきた。そして菅政権下の2021年7月にその任を引き継ぎ、岸田政権発足後もこのポストにとどまっているのが、安倍政権から菅政権にかけ、外務次官を戦後最長となる3年5カ月務めた秋葉剛男氏だ。

 北村前局長が警察庁の外事畑出身で独自の情報収集網を持ったのに対し、秋葉氏は多くの国内有力政治家と太いパイプを持ち、根回し力が評価された。秋葉氏は北村氏が創設した同局内の経済班を拡張する構えで、政策的対応の素早さは衆目の一致するところだが、政権の浮沈を左右する危機管理については不安視する声も上がっている。

 まず問題視されたのは、官邸の危機管理態勢だった。2021年10月19日の衆院選公示日の午前、北朝鮮が日本海に弾道ミサイルを発射した際に、危機対応を担う岸田文雄首相、松野博一官房長官がいずれも東京都内を不在にしており、危機管理上の問題が指摘された。不測の事態に備え、常に首相か官房長官のどちらかが在京することになっているにもかかわらず、岸田政権が10月4日に発足したばかりの「若葉マーク」だったからか、岸田首相は地方で遊説、松野官房長官は地元で選挙活動を行っていた。

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