焦点は米本土攻撃能力:「核のエスカレーションラダー」構築に進む北朝鮮

激変する東アジアのミサイル情勢2

執筆者:高橋杉雄 2021年12月23日
エリア: アジア
KCNA[朝鮮中央通信]が報じた新型SLBMの発射実験=10月19日 ⓒEPA=時事
北朝鮮は核・ミサイルを抽象的な抑止力とは捉えていない。近年の発射実験は実戦運用が狙いであり、視線の先は米本土への核攻撃能力獲得だ。この先、金正恩が「犠牲を恐れる米国は日本のための報復を避ける」と考えれば、日本は深刻な危機に直面する。

 英語で国際政治を議論するとき、衝撃的な出来事を指して「ウェイクアップコール」ということがある。1998年8月31日、北朝鮮のテポドン弾道ミサイルが発射され、日本列島上空を飛び越えたことは、日本の安全保障政策にとってまぎれもない「ウェイクアップコール」であった。これを直接的なきっかけとして、日本は米国との弾道ミサイル防衛(BMD)についての協力を進め、また情報収集衛星を打ち上げて宇宙空間の安全保障利用に向けた一歩を踏み出した。

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カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
高橋杉雄(たかはしすぎお) 1972年生まれ。防衛省防衛研究所防衛政策研究室長。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、ジョージワシントン大学コロンビアンスクール修士課程修了。専門は現代軍事戦略論、日米関係。著書に『現代戦略論―大国間競争時代の安全保障』(並木書房)、『日本人が知っておくべき 自衛隊と国防のこと』(辰巳出版)、『日本で軍事を語るということ 軍事分析入門』(中央公論新社)、共著に『「核の忘却」の終わり: 核兵器復権の時代』(勁草書房)、『新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛』(並木書房)、『ウクライナ戦争と激変する国際秩序』(並木書房)、『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦』(文春新書)など。
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