焦点は米本土攻撃能力:「核のエスカレーションラダー」構築に進む北朝鮮

激変する東アジアのミサイル情勢2

執筆者:高橋杉雄2021年12月23日
KCNA[朝鮮中央通信]が報じた新型SLBMの発射実験=10月19日 ⓒEPA=時事

 英語で国際政治を議論するとき、衝撃的な出来事を指して「ウェイクアップコール」ということがある。1998年8月31日、北朝鮮のテポドン弾道ミサイルが発射され、日本列島上空を飛び越えたことは、日本の安全保障政策にとってまぎれもない「ウェイクアップコール」であった。これを直接的なきっかけとして、日本は米国との弾道ミサイル防衛(BMD)についての協力を進め、また情報収集衛星を打ち上げて宇宙空間の安全保障利用に向けた一歩を踏み出した。

   北朝鮮はその後も繰り返し弾道ミサイルを発射するとともに、2006年以降2021年12月現在までに6回の核実験を実施し、北東アジアの安全保障環境を緊張させてきた。BMDの開発・配備、平和安全保障法制、ガイドライン見直しなど、21世紀に日本の安全保障政策は大きく進展してきたが、その目的の1つは、北朝鮮の核・ミサイル開発による脅威の増大に対応することであった。

 今年もまた、3月、9月、10月に北朝鮮は弾道ミサイルを発射しており、引き続き核・ミサイルの開発と配備を進めていることは明らかである。最新の防衛白書によると、北朝鮮がこれまでに開発・配備した弾道ミサイルは合計で18種類に及ぶ[1]。これらは、スカッドに代表される射程500km前後の短距離弾道ミサイル、ノドンに代表される射程1500-2000km前後の中距離弾道ミサイル、火星と呼ばれる射程5000km以上の長距離ミサイルに分けることができる。2021年には、これらに加えて巡航ミサイルの発射実験も行われた。

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