「財政政策検討本部」役員会であいさつする西田昌司本部長(中央)。党内では“NMT本部”と呼ぶ向きも ⓒ時事

「似たような旗を掲げていても、二つの本部は関ケ原の東軍、西軍」。

 自民党議員の一人がこう解説するのは、岸田文雄首相肝いりの「財政健全化推進本部」と、高市早苗政調会長の下にある「財政政策検討本部」である。

 名称の似た二つの本部の並立に至る経緯は複雑だ。

 そもそも自民党には政務調査会のもとに「財政再建推進本部」が置かれており、政府に歳出改革を促す議論を進めてきた。ところが岸田政権が誕生し、高市氏が政調会長に就くやいなや、同氏は「財政政策検討本部」(=以下、検討本部)を立ち上げた。ポイントは名称から「(財政)再建」を削ったことだ。高市氏の持論、積極財政推進の拠点とする狙いを隠していない。

 この動きを目の当たりにした岸田首相は牽制に走る。「財政再建推進本部」を党総裁の直轄機関に改組して、「財政健全化推進本部」(=以下、健全化本部)を置いたのだ。

 違うのは方向性である。健全化本部は最高顧問に麻生太郎元首相が就き、本部長には額賀福志郎衆議院議員が就任した。こちらが名前通り財政の健全化を追究課題とする一方、検討本部は最高顧問に安倍晋三元首相が、本部長には西田昌司参議院議員が就いており、いまや積極財政派の梁山泊と化している。中枢メンバーには現代貨幣理論(いわゆるMMT)の信奉者が多く、「その代表格の西田本部長の名をもじって、党内では“NMT本部”とすら呼ばれている」(自民党関係者)。

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