新・マネーの魔術史:未来篇 (51)

コロナ対策で急増した国債残高は深刻な問題を引き起こす

執筆者:野口悠紀雄 2020年9月17日
エリア: アジア
リブラ公式HPより

 

 コロナ期に急増した財政支出は国債で賄われる。その結果、国債残高が急増し、新規の国債発行は困難になる。これに対処する第1の方法は、日本銀行が額面より高い価格で買い上げることだ。しかし、そうすると、国債償還時に日銀に損失が発生する。

 第2の方法は、マイナス金利を放棄し、日銀当座預金に付利することだ。しかし、短期金利が上昇すると、付利は巨額なものになりうる。

国債残高が1000兆円を超える

 4月 20 日に閣議決定された新型コロナウイルス感染症緊急経済対策は、事業規模が117.1兆円のものとなった。補正予算は27.5兆円で、そのうち一般会計が25兆6914億円だ。一般会計の補正予算での増加25兆6914億円のすべては、国債の追加発行で賄う。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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