NATO拡大がウクライナ危機を招いたのか?

執筆者:フランシス・フクヤマ(Francis Fukuyama)2022年2月25日
2月24日朝、キエフ独立広場で祈る女性 (C)AFP=時事

 ついに起きてしまった。何週間もかけて徐々に戦力を増強してきたロシア軍は、2月21日、ウラジーミル・プーチン大統領がドネツク州とルガンスク州の親ロシア派支配地域の独立を一方的に承認した後、ウクライナに侵攻した。ロシア政府は「大量虐殺」や「ファシスト」、「平和維持軍」などの言葉に、まるでジョージ・オーウェルの『1984』のように本来とは逆の意味を持たせている。19万人のロシア軍に囲まれたウクライナが、ドンバスへの大規模な攻撃とロシアへの侵攻を計画しているというプーチンの口実は、あまりにも見え透いており、馬鹿げている。

 自由世界がいまこそ、最大限の制裁を加えなければならないことは、はっきりしている。「限定的な」侵攻だからそれに見合った対応を、と言っている時ではない。制裁は、ロシアのエリート集団すべてに大規模に適用されなければならない。彼らには将来、北京で高級住宅を購入できても、ロンドンでは購入させない。ドイツは天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム2」稼働の認証手続きを停止すると発表した。意義がある。私が期待していた以上だ。この15年間、モスクワがサラミを薄く少しずつ切るように主張を通してくるのを見てきたが、これから先、どこかでそれが止まると考えるのは甘すぎる。

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