1989年12月、マルタ島でブッシュ米大統領(左)と会談して冷戦を終結させたゴルバチョフソ連共産党書記長(中央)。だがその2か月後、ベーカー米国務長官(右)との会談で「NATO不拡大」の約束はあったのか―― (C)AFP=時事

 ロシアとウクライナ、そして米欧との大きな争点の1つはNATO(北大西洋条約機構)の拡大問題である。ロシアはウクライナのNATO加盟、つまりNATOのさらなる拡大に反対であり、NATOはこれ以上拡大しないとの拘束力のある約束を求めている。この背景には、「冷戦終結時に西側はNATO不拡大を約束したものの、その約束は破られてきた」というロシアの主張が存在する。

 もっとも、ウクライナのNATO加盟問題が現実には進展していないことを踏まえれば、2021年秋以降のウクライナ国境へのロシア軍集結による緊張状態の直接の原因がNATO(不)拡大問題だというのは、おそらく正しくない。ロシア側がこの問題をプレイアップした結果、西側の議論を含め、そのような認識になってしまったというのが実態だ。オラフ・ショルツ独首相も、

「議題になっていないものを大きな政治問題にするのは奇妙なことだ」

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。