ロシアのウクライナ侵攻に関するトルコの外交

執筆者:今井宏平2022年3月14日
トルコのエルドアン大統領は米露に対する戦略的ヘッジングを続けるのか(C)AFP=時事

 

 ウクライナ情勢が風雲急を告げる中、ロシアとウクライナに対するトルコの対応も注目されるようになった。トルコにとって両国は黒海を挟んだ隣国であり、どちらの国とも利害関係が強い。また、2014年のロシアによるクリミア併合の際にクローズアップされたように、クリミア半島から移住したタタール人がトルコには一定数存在する。

 ここでは、トルコがロシアのウクライナ侵攻にどのように対応しているのかに関して、(1)近年のトルコ外交の変化、

(2)ロシア、ウクライナとの強いつながり、

(3)積極的な中立外交、

(4)想定外の課題

 という4点について確認し、今後のトルコの外交政策について検討する。

協調外交に転じた2021年以降

 昨年秋にフォーサイトで論じたように、最近のトルコ外交を俯瞰すると、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はクーデター未遂事件のあった2016年から2020年まで内政を最優先する外交を展開し、隣接地域との関係が不安定化していたのに対し、2021年以降は隣接地域内で協調を目指し、2016年以降放棄していた紛争の仲介にも乗り出している¹

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