カンボジアではコロナ禍で電子決済が急速に普及した (C)AFP=時事

「買い物の支払いでバコンは使いません。ほかのアプリで決済しています」。そう話すのは、カンボジアの首都プノンペン在住の女性(40代)だ。

バコン」はスマートフォンのアプリを通じ、電話番号やQRコードで店舗への支払いや個人間・企業間の送金ができる決済システム。フィンテック企業、ソラミツ(東京都渋谷区)が開発に携わり、2020年10月に本格運用が開始された。

 バコンにはソラミツが開発したブロックチェーン(分散型台帳)技術「ハイパーレジャーいろは」のシステムが導入され、送金手数料が無料で、従来の電子決済より速く、より安全に支払うことができるデジタル通貨として注目を集めた。カンボジアが目指す「デジタル先進国」の要となる通貨として期待が高まっていた。

 ところが、21年10月時点のバコンのリテールユーザーは約20万人と、カンボジアの人口1700万人の1%程にとどまっている。バコンが利用できる店舗も約5000店舗で、市中で利用できる場所は少ない。

 その一方で、最近になって現地で広く利用されているのが、 カナダ系アドバンスド・バンク・オブ・アジア(ABA銀行)の電子決済アプリ「ABAモバイル」だ。利用者は20年9月時点で85万人以上。コロナ禍で急速に利用者を増やし、カンボジア国内の銀行が提供する決済アプリでは最も普及している。

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