「行儀が良すぎる」全人代は政権の安定を意味しない(3月5日、全人代の開幕に臨む習近平国家主席と李克強首相=後方) (C)AFP=時事

 3月11日、中国の全国人民代表大会が終了した。すべてが予定通りに進んだように見える。習近平政権の安定振りを示しているようだが、あまりに行儀が良すぎる。今秋開催される第20回党大会が本番であり、それに向けて水面下でのせめぎ合いは続いていると見るべきであろう。表面的な安定とは裏腹に、習近平政権は多くの点で未完成であり、その基礎は決して盤石ではないからだ。なお、本稿では、政権の考え方を「理論」ないし「思想」、実施の仕組みを「体制」、そして両者を包含した物事の進め方を「路線」という言葉で表すことにする。

習近平政権は実に多くのものを勝ち取ったのに「安定感」に欠ける

 鄧小平路線は、鄧小平理論と鄧小平体制からなる。鄧小平理論は毛沢東思想をかなり修正し大幅に加筆して作り上げられた。習近平思想は、その鄧小平理論を一部修正し、かなり加筆している。鄧小平が語っていない領域に足を踏み出し、新たな考え方を必要としたからだ。そして前回本欄で、その習近平思想そのものが生成発展のプロセスにあることを記した。まだ完成し、定着してはいないのだ。これが安定感に欠ける一つの理由だ。

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