「江沢民の安定」得られぬ習近平統治「5つの違い」と「最大の挑戦」

執筆者:宮本雄二 2022年3月23日
タグ: 中国 習近平
エリア: アジア
「行儀が良すぎる」全人代は政権の安定を意味しない(3月5日、全人代の開幕に臨む習近平国家主席と李克強首相=後方) (C)AFP=時事
全人代は大きな動きなく終わったが、水面下では習近平3選後の路線をめぐり、せめぎ合いが続いているのは間違いない。権力集中を着々と進めた習近平が、いまだに安定感に欠けるのはなぜなのか。そこに、ゼロコロナ政策や対米政策での異様にも映る「執着」の根があり、秋の党大会での人事を読み解くカギもある。

 3月11日、中国の全国人民代表大会が終了した。すべてが予定通りに進んだように見える。習近平政権の安定振りを示しているようだが、あまりに行儀が良すぎる。今秋開催される第20回党大会が本番であり、それに向けて水面下でのせめぎ合いは続いていると見るべきであろう。表面的な安定とは裏腹に、習近平政権は多くの点で未完成であり、その基礎は決して盤石ではないからだ。なお、本稿では、政権の考え方を「理論」ないし「思想」、実施の仕組みを「体制」、そして両者を包含した物事の進め方を「路線」という言葉で表すことにする。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二(みやもとゆうじ) 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日本アジア共同体文化協力機構(JACCCO)理事長、日中友好会館会長代行。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』などがある。
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