ソニーの「VISION-S 02」は、エンタメ領域を超えたEV事業そのものに対する本格参入表明だ   (C)EPA=時事

自動車メーカー「オリジナルOS」が破れずにいた壁

 車載OS開発で最も必要とされる能力は、車体などハードの開発力でなく「ソフトの開発ノウハウ」であり、これは自動車メーカーよりもIT企業に優位性がある。

 このことは、グーグルやアップルが、2000年代の終盤頃から先行して独自の地図、自動運転システム、各種のエンターテインメント機能といった車載OSの要素技術の開発に巨額を投じてきたことにも表れている。

 一方、自動車メーカーも車載OSの構想自体は早い段階から持っており、2010年代半ば頃には、グーグルやアップルと提携したり、半導体企業やIT企業と連合体を形成したりしたが、「自社オリジナルのOS」開発は遅々として進まなかった。

 理由はいくつか考えられる。まず、自動車大手はソフト開発の人材とノウハウを持っていなかったことがある。また、日進月歩のITと違い、自動車開発は数年単位という「リードタイム」の違いもある。

 さらに、エンジンに代表される自動車の「中核技術」の開発・製造を、自社と1次から4次、5次まで下請けのグループ部品企業という「ピラミッド構造」の中で完結させてきた自動車大手には、専門外のソフトといえども「自家製」以外の発想が希薄だったこともある。

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