バノンの世界観は「西側文明の最後の敵」をイスラム過激派と中国に見る (C)EPA=時事

 2016年の米大統領選へのサイバー攻撃やソーシャルメディアを通じての影響工作は、少なくともマイダン革命の起きた2014年ごろから準備されていた。プーチン政権の長期戦略は米国主導による世界の自由主義秩序の破壊であり、その本丸である米国は反自由主義工作の最大のターゲットになる。その舞台が2016年大統領選となったわけだ。

 影響工作では1億2600万人の米市民がフェイスブックでロシアによる偽投稿を受け取ったという推計もある。こうした大がかりなロシアの工作を調査した米情報当局の報告書は「クレムリンがアメリカ主導の民主主義秩序を損なうという長年の願望を進めようとしており、プーチンをはじめとするロシアの上級指導者たちは、自由民主主義秩序の促進を脅威と見なしている」と結論付けている[12]

 ただ、ここで強調したいのはロシアの反自由主義工作の手段として使われたサイバー空間での影響工作で反自由主義的なトランプ政権が生まれたというような、単純なことではない。1990年代に自由主義がロシアに対して犯した過ちへの反動としてプーチンが登場し、反自由主義が体制イデオロギーとなった。まさにそれと同様のことが、ロシアの後押しとは別に米国内で起きていた。自生的な反自由主義への動きである。

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