“トリックスター”ドゥーギンとバノン:ウクライナ侵攻の「思想地政学」(後編)

執筆者:会田弘継 2022年3月31日
エリア: 北米 ヨーロッパ
バノンの世界観は「西側文明の最後の敵」をイスラム過激派と中国に見る (C)EPA=時事
ロシアの影響工作を受けながら誕生したトランプ政権。これを“プーチンの思想戦争”の産物と単純化することはできないが、その反自由主義台頭の深層では米ロ双方の思想界に地政学的共鳴が起きていたことが見逃せない。ロシア「新ユーラシア主義」の思想家アレクサンドル・ドゥーギンと、トランプ政権誕生の仕掛け人であるスティーブ・バノンの共感と接触に注目する。(この記事の前編は、こちらのリンク先からお読みいただけます

 2016年の米大統領選へのサイバー攻撃やソーシャルメディアを通じての影響工作は、少なくともマイダン革命の起きた2014年ごろから準備されていた。プーチン政権の長期戦略は米国主導による世界の自由主義秩序の破壊であり、その本丸である米国は反自由主義工作の最大のターゲットになる。その舞台が2016年大統領選となったわけだ。

 影響工作では1億2600万人の米市民がフェイスブックでロシアによる偽投稿を受け取ったという推計もある。こうした大がかりなロシアの工作を調査した米情報当局の報告書は「クレムリンがアメリカ主導の民主主義秩序を損なうという長年の願望を進めようとしており、プーチンをはじめとするロシアの上級指導者たちは、自由民主主義秩序の促進を脅威と見なしている」と結論付けている[12]

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カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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