ウジ・アラド氏。イスラエル対外情報機関モサドの元情報(分析)局長で、ベンヤミン・ネタニヤフ新首相が次期国家安全保障会議議長に指名した新政権のキーマンだ。 三月中旬、米政府がアラド氏からの入国ビザ申請をいったん拒否する騒ぎがあった。 戦略的同盟国である米国とイスラエル。モサドと米中央情報局(CIA)も緊密な情報協力を続けてきた。しかし両国政府は互いに拭い難い猜疑心を持つ。 アラド氏は、ワシントンで最強のロビイ組織、アメリカ・イスラエル広報委員会(AIPAC)を舞台にしたスパイ事件で、米連邦捜査局(FBI)から事件への関与を指摘されていた。 この事件では、元米国防総省情報分析官ローレンス・フランクリン被告がAIPACの元外交政策部長ら二人と在米イスラエル大使館参事官に国家機密を漏らし、禁固十二年七月の実刑判決を受けた。フランクリン被告はアラド氏とも接触、アラド氏が関係する団体の招待でイスラエルを訪問した事実もある。FBIは「防諜」の立場から同氏へのビザ発給に反対したのだ。 アラド氏はネタニヤフ首相に近く、一九九七年にモサドを引退した後、ネタニヤフ氏の外交顧問を務めてきた。 実はネタニヤフ首相自身に対しても、米民主党のリベラル派は強い不信感を抱いている。クリントン大統領のパレスチナ和平提案に強く抵抗しただけではない。例のセックススキャンダルでも、ネタニヤフ氏の何らかの関与を疑う向きもあるのだ。

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