2017年大統領選挙ではロシアの銀行から940万ユーロの資金協力が報じられたルペン氏 (C)AFP=時事

 フランス大統領選は4月24日、決選投票を迎える。4月10日の第1回投票では、極右政党、国民連合(RN、2018年に国民戦線=FN=から改称)のマリーヌ・ルペン候補が、現職で中道政党、共和国前進(REM)のエマニュエル・マクロン大統領とともに決選へ歩を進めた。17年の前回大統領選と同じ顔ぶれだが、状況はかなり異なる。マクロン氏は前回、決選で66.1%を得票、33.9%のルペン氏を退けた。世論調査によれば、今回もマクロン氏優勢だが、両者の差は数ポイントまで縮まっている。フランス政治の底流で何が起きているのだろうか。

さらに洗練された「脱悪魔化」

 筆者が最初にパリへ赴任していた1990年代、国民戦線と言えばフランス政治の周縁に位置付けられる過激な小政党でしかなかった。マリーヌ・ルペン氏の父親ジャンマリ・ルペン党首の時代で、掲げる理念は移民排斥や反イスラム、歴史修正主義、反ユダヤ主義、欧州連合(EU)離脱など、少なくともその時点では危険もしくは荒唐無稽に聞こえる極端な主張ばかりだった。

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