2008年4月、NATO首脳会議に出席後、記者会見するプーチン露大統領。NATOの拡大路線などについて「ロシアにとって直接の脅威になる」と批判した (C)EPA=時事

*『ミアシャイマー「攻撃的リアリズム」の読み方――ウクライナ侵攻「代理戦争論」「陰謀論」の根本的誤り』(上)は、こちらからお読みいただけます。

 前稿では、ミアシャイマーがアメリカ外交政策に批判を向ける際のロジックを見たが、それを妥当とするかは、読者が「攻撃的リアリズム」の世界観を受け入れるかに依るだろう。

 私見では、ミアシャイマーの洞察の基本的な部分は、間違っていない。ウクライナのNATO加盟の可能性が、今回のロシア・ウクライナ戦争の構造的要因となっていることを否定するのは難しい。なんといっても、戦争を開始したウラジーミル・プーチン露大統領自身が、そのように説明している。

 ただし、ミアシャイマーが国際法の要素を全く考慮していないことを度外視する場合でも、なお問題になるのは、NATOがウクライナの加盟を認めないまま、ロシアが戦争を開始した、という事実である。つまり戦争の原因は、ウクライナを加盟させる「さらなるNATO東方拡大」ではありえる。しかし、実際に発生した「これまでの(=今ある)NATO東方拡大」が原因ではないのである。

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