マリウポリのウクライナ軍は「捨て石ではあっても犬死ではない」戦いを行っていた(黒煙が立ち上るアゾフスタリ製鉄所=4月21日) (C)AFP=時事/Mariupol City Council

これまでの展開

戦争は新たな段階に入った

 2022年2月24日、ロシアとウクライナの戦争が始まった。ロシア軍はキーウ北方、ハルキウ方面、ドンバス方面、クリミア半島の4方向からウクライナに侵攻した。しかし予想外の頑強なウクライナ軍の抵抗と巧妙な作戦指揮、そしておそらくウクライナ軍を過小評価していたが故の補給の困難や士気の低下にロシアは苦しんだ。南部の要衝、ヘルソンの攻略には成功し、東部のルハンシク州でも占領地域を拡大させてきたが、ドネツク州ではウクライナ軍の防御陣地を突破できず、またキーウ周辺でもウクライナ軍の反撃により包囲を阻止された。こうした状況に直面し、ロシアは東部ドンバス地方への攻勢に集中するとして3月末にキーウ方面の部隊をベラルーシ国境まで撤収させ、作戦の再構築を図った。 

 この時点で、筆者はロシア軍には2つのオプションがあると考えていた。1つはキーウ攻略部隊を単純に東部に移動させるオプションであり、もう1つはキーウ攻略部隊はベラルーシで休養と補充を行い、ロシア本土から動員した兵力でドンバス地方を狙った攻勢をかけるオプションである。

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