アメリカ社会を捉える「暴力を伴う政治革命」への不穏な誘惑

執筆者:ブルース・ストークス(Bruce Stokes)2022年7月22日
容疑者の白人の男(18)は黒人の多く住む地域を意図的に狙ったとみられる[ニューヨーク州バファローの銃乱射事件現場近くの献花台を訪れるバイデン大統領夫妻=2022年5月17日](C)AFP=時事

 アメリカにおける「政治的二極化」は広く知られており、ここしばらくその傾向が強まっている。こうした二極化は、様々な問題をめぐる深刻な社会的分断や、大統領選結果の激しい揺り戻し――バラク・オバマ(民主党)からドナルド・トランプ(共和党)、そしてジョー・バイデン(民主党)に代わった――を見ればわかる。

 しかしながら、現在、アメリカ国民の党派対立はより深刻で危険なフェーズに入りつつあるかもしれない。全米妊娠中絶連合(NAF)によると、連邦最高裁が州に人工妊娠中絶を制限・禁止することを認める判決を下す前の2021年でさえ、クリニックや患者に対する脅迫・暴行が前年比で128%も増えていた。

 そして今年6月、中絶の合憲性を覆す最高裁判断が出ると、極左や極右の過激派による暴力の脅威がいっそう増した。また世論調査を見ると、多数派である白人のかなりの割合の人が、人種的マイノリティーの増加を目の当たりにして、この人口動態の変化を止めるためには暴力を使ってもよいと考えていることがわかった。これに対抗する形で、マイノリティー側にも暴力を支持する人たちがいる。

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