2006年12月、クレムリンでプーチン大統領と握手する小島順彦・三菱商事社長(左)と槍田松瑩・三井物産社長(右)。1994年にシェル、三井物産、三菱商事の出資でスタートしたサハリン2は、2006年にロシア国営ガスプロムが事業主体サハリンエナジーの株式の過半数を握った[肩書は当時] (C)EPA=時事

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月30日、日本が長期にわたって投資を行い、対ロ経済協力の枠組みとして進めてきた、天然ガス資源開発のサハリン2プロジェクトを新設するロシア国営企業に全て無償で譲渡することを求める大統領令に署名した。

 この決定は、国家権力を用いて天然資源を国有化してきた、かつての中東諸国やラテンアメリカ、アフリカ諸国のケースに近い。一方で、もしロシアが提示する条件に同意し、出資を続けることを選択するなら、出資分は維持されるという点で完全なる国有化とも状況が少し異なる。

 ただし、現在に至るまでロシア側が提示する条件は明示されておらず、出資によって、これまで得ていたメリット(低価格での天然ガス取得など)が継続されるかは定かでない。

 とはいえ、萩生田光一経産大臣は日本側の権益維持のため、新たに設立される事業会社への参加を支援する方針を表明している。まだ、新たに新設されるはずの事業会社が立ち上がっていないため、当面、いつまでに最終判断を下さなければならないか明確ではないが、どこかの段階で、日本は権益を維持するために出資するものと思われる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。