サハリン2「国有化」でロシアが手にする戦略的レバレッジ

執筆者:鈴木一人 2022年7月28日
エリア: アジア
2006年12月、クレムリンでプーチン大統領と握手する小島順彦・三菱商事社長(左)と槍田松瑩・三井物産社長(右)。1994年にシェル、三井物産、三菱商事の出資でスタートしたサハリン2は、2006年にロシア国営ガスプロムが事業主体サハリンエナジーの株式の過半数を握った[肩書は当時] (C)EPA=時事
ロシアからドイツへの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」の供給停止問題は、カナダによる対ロ制裁をロシアが口実にした側面がある。ドイツがカナダに働きかけて停止は回避されたが、ロシアにとっては対独圧力が制裁緩和に繋がる前例になった。同時に、制裁緩和への“報酬”を誇示したことにもなるだろう。エネルギー武器化の戦略的意味合いとサハリン2への含意を検証する。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月30日、日本が長期にわたって投資を行い、対ロ経済協力の枠組みとして進めてきた、天然ガス資源開発のサハリン2プロジェクトを新設するロシア国営企業に全て無償で譲渡することを求める大統領令に署名した。

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執筆者プロフィール
鈴木一人(すずきかずと) すずき・かずと 東京大学公共政策大学院教授 国際文化会館「地経学研究所(IOG)」所長。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授、北海道大学公共政策大学院教授を経て、2020年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、編・共著に『米中の経済安全保障戦略』『バイデンのアメリカ』『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』『ウクライナ戦争と米中対立』など多数。
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