ニクソン・ショックの二の舞とならないために(C)Solodov Aleksei/shutterstock.com

 

 8月1日のシンガポールを皮切りに、マレーシア、台湾、韓国、そして我国を訪問した4泊5日のナンシー・ペロシ米下院議長による「突風」のような歴訪が終わった。ハイライトである台湾訪問をめぐって、我国のメディアでも「習近平政権への痛撃」から「習政権の権力強化に追い風」まで、あるいは「台湾の人々の心に響いた」との大賞賛から「政治家として個人的なレガシー作りにすぎない」との冷笑気味の評価まで、じつに幅広い見解が喧々囂々と展開されている。

 ペロシ下院議長の一連の言動は米中関係に実態的にどのような影響を及ぼしたのか。米中関係を系統的に追い掛けているわけではない筆者は、確たる考えを持ち合わせてはいないが、彼女が米中関係史を踏まえ熟慮と根回しを重ね、さらには将来への見通しを持ち、緊張高まる台湾海峡に正面から向き合ったうえで台湾を訪れたとは到底思えない。やはりアメリカのさる評論家が下した「長い議員生活の最後を飾るTwilight Trip(黄昏の旅)」との表現が実態に近いのではなかろうか。

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