ニニギがサルタヒコに誘われて降臨した高千穂(筆者撮影)

 スサノヲは太古の日本を代表する太陽神で、天皇家の祖だった……。前回提示しておいたこの仮説を、さらに確かなものにできるだろうか。

『日本書紀』が認めた「男性太陽神」の存在

『日本書紀』も、複数の太陽神の存在を認めている。太陽神は女神・アマテラス(天照大神)だけではなかったのだ。前回お話しした男神の「ヒルコ(蛭児)」がそうだし、第11代垂仁天皇の時代に新羅から来日したアメノヒボコ(天日槍、天之日矛)も、太陽神的属性を備えている(「日」と「槍=陽根・男根」)。

 さらに、ヤマト建国以前に、伊勢に向かった男性の太陽神がいたと『日本書紀』が記録している。それが、天孫降臨の場面(神代下第九段一書第一)に登場するサルタヒコ(猿田彦大神)だ。

 ニニギ(アマテラスの孫・天津彦彦火瓊瓊杵尊[あまつひこひこほのににぎのみこと])が地上界に下りようとしたとき、天八達之衢[あまのやちまた](天上界の分かれ道)でサルタヒコと出くわす。問題はサルタヒコの姿で、鼻は長く口と尻が光り、目は八咫鏡[やたかがみ]のようで、照り輝いているさまは赤いホオズキのようだった。目力が強く、誰も対峙できなかったので、アメノウズメを遣わした。アメノウズメは服をはだけ、胸乳と性器を露出し、サルタヒコに「なぜ立ち塞がっている」と尋ねた。するとサルタヒコは、「お迎えにあがった」と言い、ニニギを誘導するというのだ。こうしてニニギは、無事に筑紫の日向の高千穂峰に降臨できた。

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