ノルドストリーム2からのガス漏洩が起きた海域=9月27日、デンマーク・ボーンホルム島沖  (C)AFP=時事 / DANISH DEFENCE

   今年の冬、欧州の市民と経済は極めて厳しいエネルギー情勢に直面する恐れが高まっている。主力ガスパイプライン、ノルドストリーム1に原因不明の損傷が発生し、今後の供給を期待できなくなったことから、欧州連合(EU)の一次エネルギー全体で24%を占める重要なエネルギー源である天然ガスの価格が未曽有の水準に高騰する可能性がある。最悪の場合には、欲しくても天然ガスが手に入らない(物理的不足)状況が発生するかもしれない。天然ガス価格の暴騰は、その他のエネルギー価格高騰にも波及する恐れがあり、その状況下、欧州経済は深刻な景気後退に落ち込む可能性もある。

ガスの「脱ロシア」に伴う困難

 もともと、欧州のエネルギー市場は、ウクライナ危機の発生後、エネルギー価格の高騰と市場不安定化に苦しめられ続けてきた。その最大の原因は、欧州全体として、またドイツなどの主要消費国の各々において、エネルギー供給面でロシアに大きく依存してきたこと、そのロシアのエネルギー供給の支障や途絶を巡る不安が現実の問題となってきたことの2つである。欧州全体(英国やトルコなども含む)で見ると、2021年時点で、ロシアからの輸入は全輸入において、石油で32%、ガス(パイプラインガスと液化天然ガス=LNGの合計)で54%、石炭で48%となっており、いずれもロシアが最大の輸入源となっている。

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