ノルドストリーム“損傷”で浮かび上がる欧州天然ガス「未曾有の危機」

執筆者:小山 堅 2022年10月4日
エリア: ヨーロッパ
ノルドストリーム2からのガス漏洩が起きた海域=9月27日、デンマーク・ボーンホルム島沖  (C)AFP=時事 / DANISH DEFENCE
9月末に発生した主力ガスパイプライン「ノルドストリーム1・2」の損傷は意図的な破壊工作との見方も多い。今後の究明が待たれるが、少なくとも欧州のガス需給上の懸念が一層高まることは確実だ。厳冬などの要素も重なれば、8月末に付けた原油価格換算で1バレル600ドルの水準突破も視野に入る。そして忘れてはならないのは、ガス在庫の払底から始まるであろう2023年は問題がさらに深刻化することだ。

   今年の冬、欧州の市民と経済は極めて厳しいエネルギー情勢に直面する恐れが高まっている。主力ガスパイプライン、ノルドストリーム1に原因不明の損傷が発生し、今後の供給を期待できなくなったことから、欧州連合(EU)の一次エネルギー全体で24%を占める重要なエネルギー源である天然ガスの価格が未曽有の水準に高騰する可能性がある。最悪の場合には、欲しくても天然ガスが手に入らない(物理的不足)状況が発生するかもしれない。天然ガス価格の暴騰は、その他のエネルギー価格高騰にも波及する恐れがあり、その状況下、欧州経済は深刻な景気後退に落ち込む可能性もある。

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執筆者プロフィール
小山 堅(こやまけん) 日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員。早稲田大学大学院経済学修士修了後、1986年日本エネルギー経済研究所入所、英ダンディ大学にて博士号取得。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。政府のエネルギー関連審議会委員などを歴任。2013年から東京大公共政策大学院客員教授。2017年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授。主な著書に『中東とISの地政学 イスラーム、アメリカ、ロシアから読む21世紀』(共著、朝日新聞出版)、『国際エネルギー情勢と日本』(共著、エネルギーフォーラム新書)など。
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