エネルギー地政学における「アクターとしての豪州」:貿易パートナーとの「ウィン・ウィン」構築に再びシフト?
国際エネルギー情勢の先行き不透明感が強まり、安全保障や気候変動に影響を及ぼすエネルギー地政学に対する関心が高まっている。世界の分断の深刻化も、エネルギー地政学の重要性をクローズアップさせることに繋がっている。
エネルギー地政学を考える上で特に重要な役割を果たすアクター・プレイヤーが世界には4つある、と筆者は考えている。米国、中国、ロシア、中東である。これら4つの国・地域の、各々の情勢や政策・戦略とともに、4者間の相互関係が世界のエネルギー地政学を動かしていく。例えば、米国でのトランプ2.0の政策のみならず、米中関係、米ロ関係、米国と中東(主要国)の関係が重要になるのである。
しかし、もちろん世界のエネルギー地政学を考える上では、他にも重要なアクターが存在する。EU(欧州連合)や欧州主要国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)などが該当し、日本も重要なアクターであることは言を俟たない。それに加えて、世界、とりわけ日本にとって欠かすことのできない重要性を持つ国として、豪州の存在を忘れてはならない。
エネルギー輸出重視に生じた「変化」「揺らぎ」
豪州は世界有数のエネルギー資源大国であり、エネルギー産出・輸出国である。また、今後のエネルギー転換において不可欠となるレアアースを始めとする重要鉱物の資源国としても大きな存在感を持っている。豪州は、LNG(液化天然ガス)において世界シェア20%を占める世界3位の輸出国である(2024年、以下同様)。ちなみに、1位は米国(シェア21%)、2位がカタール(シェア20%)となっており、現時点では上位3カ国がシェアで肩を並べる状況にある。また、石炭については豪州の輸出シェアは25%を占め、世界2位である(1位はインドネシア、シェア30%)。
豪州は、地理的な近接性から伝統的にアジアにとって重要なエネルギー供給国であり、特に日本にとってはLNGと石炭の最大の供給国である(2024年時点での日本の総輸入に占めるシェアはLNGが38%、石炭66%)。2010年に発生した、中国による対日レアアース禁輸以降、豪州のレアアース開発は供給源多様化と安定供給確保にとって高い戦略的重要性を持つに至った。
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