ウクライナのゼレンスキー大統領は11月16日、G20首脳会議でのビデオ演説で、「キーウ安全保障協約」の重要性を強調した (C)EPA=時事

 ウクライナ軍が、南部のヘルソンを奪還した。これによって、数カ月にわたって継続してきたウクライナ軍の作戦が、新しい段階に入ることになるはずである。

 ロシア軍は、占領地に塹壕を張り巡らせるなど、陣地を防御する構えに出ている。一方ウクライナ軍は、不用意に消耗戦に持ち込まれることを避けながら、ロシア軍の補給路の新たな断絶地点を見出していくだろう。ただ、新しい作戦の動きはまだ見えてきていない。

 本稿では、終戦の見通しについて分析を進めながら、G20(主要20カ国・地域)首脳会議でもウォロディミル・ゼレンスキー大統領が強調した「キーウ安全保障協約」の重要性を、集団的自衛権の運用体制に対する問いとして捉えていく作業を行う。

戦争終結に向けた国際社会の眼差し

 折しもアメリカのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、“ウクライナが奪還した陣地を堅固にするために、外交交渉をするように働きかけるべきだ”と述べた、という報道が出た。ウクライナ軍は依然として勢いがあるため、ウクライナ政府が停戦交渉を渇望する段階ではないが、本格的に冬場を迎えたこともあり、戦局が膠着する傾向に入ってきた、という観察は成立しうる。これを踏まえた様々な可能性の模索が今も続いている。

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