脱ロシアを優先したことで脱炭素は一時的な後退を強いられている[褐炭火力発電所の隣に立つ風力発電機=2022年1月11日、独グレーベンブロイヒ近郊](C)EPA=時事

 ロシアによるエネルギーの武器化を含めたエネルギー危機の深刻化によって、欧州はまさに「戦時経済」に引き込まれることになった。エネルギー価格の高騰は、各国の景気にも大きな足かせとなっている。そうしたなかで欧州は、脱ロシア化やエネルギー安全保障という課題に向けて、いかなる舵取りをしようとしているのか。

実態として進む脱ロシア:いま問われるべきこと

 本稿「上」でみたように、EUはロシアからの石炭・石油に加えて天然ガスの輸入禁止(禁輸)に関する決断を迫られる前に、ロシアが輸出を大幅に削減してきたため、結果として、強制的に脱ロシアをほぼ実現してしまったというのが実態である。

 ただし、その前の段階から、ドイツはロシアへのエネルギー依存を軽減する方針を進めていた。独経済・気候保護省は、2022年5月1日に発表した進捗報告で、対露依存は、2021年比で石油は35%から12%に、石炭は50%から8%に、天然ガスは55%から35%に、すでに低下したと明らかにしていた。そして、諸条件が整えば、石油の完全脱却は2022年の夏の終わりまでに、天然ガスも2024年夏までに対露依存脱却が可能との見通しを示していた。

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