欧州が脱ロシアから追求するエネルギーの「戦略的選択」(下)――エネルギー安全保障と、そのさらに先にある脱炭素

執筆者:鶴岡路人 2022年12月6日
タグ: 脱炭素 EU ロシア
エリア: ヨーロッパ
脱ロシアを優先したことで脱炭素は一時的な後退を強いられている[褐炭火力発電所の隣に立つ風力発電機=2022年1月11日、独グレーベンブロイヒ近郊](C)EPA=時事
欧州にとって脱ロシアは、短期的には「脱炭素」との間にトリレンマを生じさせるが、長期的観点では再生可能エネルギーがロシアに対する抑止力になる。「戦時経済」に引き込まれた欧州は、エネルギー安全保障と脱炭素を同時に追求する茨の道へと戦略的に踏み出した。(上)はこちらからお読みになれます

 ロシアによるエネルギーの武器化を含めたエネルギー危機の深刻化によって、欧州はまさに「戦時経済」に引き込まれることになった。エネルギー価格の高騰は、各国の景気にも大きな足かせとなっている。そうしたなかで欧州は、脱ロシア化やエネルギー安全保障という課題に向けて、いかなる舵取りをしようとしているのか。

実態として進む脱ロシア:いま問われるべきこと

 本稿「上」でみたように、EUはロシアからの石炭・石油に加えて天然ガスの輸入禁止(禁輸)に関する決断を迫られる前に、ロシアが輸出を大幅に削減してきたため、結果として、強制的に脱ロシアをほぼ実現してしまったというのが実態である。

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執筆者プロフィール
鶴岡路人 慶應義塾大学総合政策学部准教授。1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。東京財団政策研究所主任研究員を兼務。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)など。
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