EU(欧州連合)は、2025年12月18日にブリュッセルで開催した欧州理事会(EU首脳会合)で、2026、27年の2年間に合計で900億ユーロ(約16兆円)の無利子融資をウクライナに対して実施する合意に達した。当初目指されたロシア中央銀行の凍結資産を活用する案は頓挫し、かわりにEU予算を担保とする案が承認されたのである。
凍結資産の活用の是非やその方法に注目が集まったために、EUは分裂を露呈することになった。一部報道でも、融資が合意されたことよりも、凍結資産活用案が断念されたことの方が強調されていた。しかし、ウクライナ支援の継続の観点で今回の融資合意は極めて重要だし、合意された枠組みは、多くの点で当初の凍結資産活用案と共通していることも注目に値する。
そして、今回の融資の仕組みとそこに至る過程には、良くも悪くも多くの「EUらしさ」が存在する。EUの決定の中身とその意味を解剖することにしたい。
上昇した緊急性
まずは外形的な部分である。12月18日の首脳会合は、はかり方にもよるが15時間から17時間続き、終了したのは、日付が変わった19日の午前3時頃で、アントニオ・コスタ欧州理事会議長による記者会見が始まったのは同3時半をまわっていた。日本の総理が参加する首脳会合では考えにくいかもしれないが、EUにとって、これは必ずしも珍しいことではない。予算交渉など、どうしてもその時に合意しなければならない案件があれば、完全な徹夜もおこなわれるし、翌日やその次の日まで延長されることもある。何とも「EUらしい」やり方だ。
もっとも今回の場合、ウクライナに対する融資を12月中に決めなければならない法的や制度的な制約は特になかった。しかし、急ぐ必要があるとの認識が急激に強まっていた。第1に、ウクライナ政府の資金需要を考えると2026年春までの融資実施が必要であり、各種手続きに要する時間を考慮すれば、残り時間が少なくなっていた。戦争が続くにしても、何らかの停戦・和平が実現するにしても、政府を存続させるためには財政的裏付けが不可欠である。ウクライナは2026、27年の2年間で1350億ユーロの財政支援が必要と試算されていた。
第2に、米国の動きがあった。
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