「白紙運動」が習近平政権にもたらした恐れとは……(C)EPA=時事
 

 人口の8割に当たる11億人以上が新型コロナウイルスに感染したとされる中国で、習近平国家主席が3年も固執し続けた「ゼロコロナ政策」を撤廃するきっかけとなったのは、2022年11月末に全国各地で自発的に抗議した大学生ら若者による「白紙運動」の広がりだった。

 白紙運動の特徴は、中心となる組織や人物、あるいは大学を超えたネットワークが背後にないことだが、参加者には「若い女性」、「高学歴」、「社会への高い意識と責任感」、「ジェンダー問題への関心」などの共通点がある。

 警察は当初、デモ参加者を事情聴取し、すぐ解放する対応を取ったが、昨年12月18日から方針を一転し、いったん不問にした若者を次々と逮捕している。この強硬方針は何を示しているのか。

チャット友達とデモに参加した26歳女性

 26歳の女性、曹芷馨(ソウ・シケイ)は、白紙運動に参加したことで逮捕された女性の1人だ。

 2018年に北京の名門大学、中国人民大学修士課程(歴史学)に入学し、21年に同課程を修了すると、北京大学出版社に入り、編集者として働いていた(中国人権サイト『維権網』)。大学で中国環境問題の歴史を研究していた曹は社会問題への関心が高く、中国で13億人が使う「微信」(ウィーチャット)や中国では規制されている秘匿性の高い「テレグラム」などのSNSでチャットグループに参加していた。グループのメンバーはいずれも20人程度で、大部分が女性だ。チャットのほか、食事会を開いたり、一緒に映画祭に参加したり、トークショーを聞いたりした(「在中国、年軽女性意外成為新一代反抗的標志」『ウォールストリートジャーナル(WSJ)』中国語版、1月27日)。

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