ロシア「総司令官交代」でちらつく「クーデター」の影

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執筆者:古本朗2023年2月9日
ゲラシモフ参謀総長(左)の総司令官就任は、ショイグ国防相(右)と共に行った“ミニ・クーデター”だったのか (C)EPA=時事

 ウクライナ侵攻を続けるロシアのウラジーミル・プーチン露大統領の周辺に、またぞろ「クーデター」や「軍部造反」の情報が飛び交っている。いずれも情報の確度は検証困難だ。

 クレムリンの内幕暴露で知られる政治学者アンドレイ・ピオントコフスキー氏は動画発信(1月19日)で、セルゲイ・スロビキン将軍が同月、侵攻軍総司令官から突如解任され、後任にワレリー・ゲラシモフ参謀総長が任命された人事について、「セルゲイ・ショイグ国防相と参謀総長が直談判で大統領に呑ませた人事で、ミニ・クーデターとも呼ぶべき出来事だった」と指摘した。

 スロビキン前総司令官は、事実上の傭兵組織である民間軍事会社「ワグネル」創設者、エフゲニー・プリゴージン氏の盟友と目される。プリゴージン氏は大統領と近しく、スロビキン将軍を総司令官に推す一方、参謀総長の采配を非難し、「ワグネル」の戦功を売り込むなどして主導権奪取を狙った模様だ。ピオントコフスキー氏によると、国防相、参謀総長は「結束した数百人もの子飼の将軍たち」の支持を背に反撃に転じ、総司令官交代を大統領に迫った。「ミニ・クーデターでプーチン氏の威信は大きく失墜した」とする。

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