多くの中小企業にとって原材料費などコストの吸収は容易でない[現場視察に臨んだ岸田首相=2022年10月15日、東京都目黒区](C)時事

「これだけ電気代や原材料費が上がっている中で、どうやって賃上げしろと言うのですか」

 関東近県の下請け中小企業の社長は顔を曇らせる。「コストが上昇したからと言って、すぐに納入先が価格の引き上げを認めてくれるわけではありませんから」

 岸田文雄首相は上昇が続く物価に対して、それを上回る賃上げを実現すると繰り返し発言している。余力のある大手企業の経営者からは賃上げに前向きな声が出ているが、問題は中小企業。納入先の大企業に価格改定を受け入れてもらえなければ、原材料費などコストの吸収ができず、賃上げどころの話ではない。要は、中小企業のコスト増に伴う製品価格の引き上げを、大手企業が受け入れるかどうかが大きなポイントになっている。

 そこで岸田内閣は、思い切った手を打った。昨年末、公正取引委員会に、主体的に取引価格の引き上げ交渉を行っていなかったと認められる企業名を公表させたのだ。

発注側と受注側には「意識のギャップ」も

 その数13社。佐川急便/三協立山/JA全農/大和物流/デンソー/東急コミュニティー/豊田自動織機/トランコム/ドン・キホーテ/日本アクセス/丸和運輸機関/三菱食品/三菱電機ロジスティクス。いずれも名だたる有名企業だ。

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