政府「指導」ではなくならない「下請けに皺寄せ」の根深い現実

執筆者:磯山友幸 2023年2月21日
タグ: 岸田文雄 日本
エリア: アジア
多くの中小企業にとって原材料費などコストの吸収は容易でない[現場視察に臨んだ岸田首相=2022年10月15日、東京都目黒区](C)時事
コスト上昇分の価格転嫁に応じない「優越的地位の濫用」の恐れがある13社が“下請けGメン”の覆面調査で明らかになった。下請け中小企業の実態は深刻化するが、政府の「指導」による解決には限界も。

「これだけ電気代や原材料費が上がっている中で、どうやって賃上げしろと言うのですか」

 関東近県の下請け中小企業の社長は顔を曇らせる。「コストが上昇したからと言って、すぐに納入先が価格の引き上げを認めてくれるわけではありませんから」

 岸田文雄首相は上昇が続く物価に対して、それを上回る賃上げを実現すると繰り返し発言している。余力のある大手企業の経営者からは賃上げに前向きな声が出ているが、問題は中小企業。納入先の大企業に価格改定を受け入れてもらえなければ、原材料費などコストの吸収ができず、賃上げどころの話ではない。要は、中小企業のコスト増に伴う製品価格の引き上げを、大手企業が受け入れるかどうかが大きなポイントになっている。

 そこで岸田内閣は、思い切った手を打った。昨年末、公正取引委員会に、主体的に取引価格の引き上げ交渉を行っていなかったと認められる企業名を公表させたのだ。

発注側と受注側には「意識のギャップ」も

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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