政権にも深く食い込む[TSMCがアリゾナ州フェニックスに建設中の半導体工場でバイデン大統領のスピーチに耳を傾けるクックCEO=2022年12月6日](C)AFP=時事

 高成長を続けてきた米テック5強――マイクロソフト、アルファベット(グーグル持ち株会社)、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム、アップルが、大きな壁に突き当たっている。コロナ後の米経済の構造的変化などで、2023年第1四半期(2022年10~12月期)は各社とも軒並み減収減益を記録。だが、その決算内容とビジネスモデルの変化を仔細に見れば、浮かび上がってくるのはアップルの底力だ。売上高と利益は市場予想に届かなかったものの、競合各社のようになりふり構わぬ大規模な人員削減やコストカットは迫られていない。

   その背景には、アマゾンやグーグル、メタのように採算の見込みが低いイノベーションやディスラプション(創造的破壊)の目標達成にこだわらず、過去10年にわたり安定して利益が出せる「メンテナンス経営」を実践してきたティム・クック最高経営責任者(CEO)の先見の明がある。

   本稿では、急成長期に事業をむやみに広げて従業員数が増え過ぎたツケを、レイオフ、経費削減や不採算事業の縮小で払うライバルのアマゾンと、破天荒な創立者スティーブ・ジョブズの攻めの経営を捨てたと非難を浴びながらも、安定した収益をもたらすサービス分野を育成し、控えめな採用や節税などで強靭な企業体質を築いたアップルを対比させながら、「ポスト高度成長期」のIT大手に必要とされるビジョンを読み解く。

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