現在のロシアの行動は、第二次世界大戦時に「生存圏」を標榜して拡張主義的政策をとったナチス・ドイツの行動と同じように、「圏域」思想を重視する世界観に基づいている[一方的に「併合」を宣言したウクライナ東部ドネツク州の要衝、マリウポリを訪問したプーチン氏=2023年3月19日]](C)AFP=時事/Russian Presidential Press Office

 ロシア・ウクライナ戦争はしばしば、例外的な戦争だ、と言われている。だが、果たして本当にそうだろうか。

「ヨーロッパにおける主権国家間の戦争だから」というのが、「例外性」の理由とされることが多い。だがそれが、果たして本当に簡単にわかった気になれる理由なのかどうか、疑問の余地があるのではないか。

 本稿では、あらためてロシア・ウクライナ戦争という現在進行形の戦争を、どのように理論的な視座から理解するか、という問いを立ててみる。そして、それによって、現代世界の武力紛争の構図を捉え直していくための視座を示す。

現代国際政治の対立構造

 3月21日の岸田文雄首相のウクライナ訪問は、中国の習近平国家主席のロシア訪問と時期が重なった。現在の世界情勢を象徴している対比だ、と話題を呼んだ。現代世界が二つに分断されている状況を反映した出来事だった、とみなされたのである。

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