春雄さんが戦った壕の入り口でアイヌ式の祈りを捧げる多原良子さん。左は長男・順也さん=糸満市で ©浜田哲二

 

小中学校の裏山に眠っていた8体の遺骨

「キーンコーンカーンコーン」

 お昼休みを知らせるチャイムを合図に、軽快な琉球歌謡が校内放送で流れ始めた。そして、賑やかな生徒たちの話し声や笑いさざめきが、隣接する丘に広がる亜熱帯の森に響いてくる。

 しかし、そこで私たちが手にしていたのは、褐色の土の色に染まった人骨。何人分あるのだろうか。それを一人ひとり仕分けながら、表面についた土の汚れを柔らかな刷毛で落としてやる。

 ここは沖縄本島南部の糸満市にある小高い丘陵地。2021年2月、隣接する小学校と中学校のすぐ裏にある壕から、8人分の遺骨が出土した。成人が6人と、子供とみられる小さな遺骨が2人分。いくつかの骨の部位は内部が炭化している。表面は綺麗なので、壕内が高温になり、蒸し焼きのようになったのかもしれない。

2021年に掘り出した8人の戦没者の遺骨。右端には子供二人分の遺骨がある=糸満市で ©浜田哲二

 私たちは、夫が元朝日新聞カメラマンで、妻が元読売新聞記者のジャーナリスト夫婦。沖縄で遺骨収集のボランティアを始めて、もう20年以上が過ぎた。が、この年のように辛く、悲しいギャップに遭遇するのは初めてだ。この小さな遺骨は七十数年間も埋もれたまま、すぐ近くから聞こえる、楽しげなざわめきや校内放送を聞いていたのだろう。

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