イスラエルとパレスチナの軍事衝突による犠牲者は後を絶たない(C) EPA=時事

 

 2022年の年の瀬、イスラエルに新政権が誕生した。首相に就任したのは、リクードのべンヤミン・ネタニヤフである。2021年6月の下野からおよそ1年半を経て、イスラエル史上最長の在任期間を誇る元首相が、再び政権の座に返り咲いた形だ。この第6次ネタニヤフ政権では、発足直後の閣僚による神殿の丘訪問、司法改革の試みと抗議活動の発生、ガザ地区での武力行使など、イスラエル国内情勢やパレスチナ問題を動揺させる出来事が続いている。

 今年(2023年)は、イスラエル政府とパレスチナ人の代表組織パレスチナ解放機構(PLO)がオスロ合意に署名し、相互承認を宣言してから30年目にあたる。しかし、現在までパレスチナ問題の解決は実現されていない。イスラエルとパレスチナでの最近の出来事は、この紛争の行方に暗い影を落としている。

期待が先行したオスロ合意

 1993年9月にワシントンで結ばれたオスロ合意は、その正式名称を「暫定自治に関する原則宣言」と言う。ビル・クリントン米大統領を中央にして、イスラエルのイツハク・ラビン首相とPLOのヤーセル・アラファート議長が握手を交わしている写真は、教科書でもお馴染みのものだろう。しかし、この合意はイスラエルとPLOが相互に存在を承認し、その後の和平交渉の進め方や交渉期間中の暫定的な体制について、大まかに取り決めたものに過ぎなかった。

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