生き残りをかけて反乱を起こしたプリゴジン。本当にこのまま無罪放免で済むのか?(C)AFP=時事

 

 6月23日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジンが引き起こした反乱は世界に大きな波紋を広げた。翌24日には、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の仲介でプリゴジンがモスクワへの進軍を停止し、制圧していた南部軍管区司令部からも撤退。これによって「プリゴジンの乱」自体は1日で終息した。

 だが、プリゴジンが起こした波紋は現在も広がり続けている。そこで本稿では、現時点におけるごく限定的な情報をもとに、今回の事件がなぜ起きたのか、どれだけの影響を及ぼすのかについて考えてみたい。

「日陰者」の不満

 今回の反乱の背景には、プーチン政権の「裏方」であるワグネルが表舞台に出てきてしまったという構造的な変化が存在している。

 ワグネルが設立されたのは2010年代初頭のことと言われ、以降、ウクライナ、シリア、リビアへの秘密軍事介入や、アフリカ諸国における資源利権・政治的コネクションの獲得のために投入されてきた。その一方、ロシア政府は傭兵業を違法であるとする刑法の規定を変えようとせず、ワグネルもその他の民間軍事会社も存在しないと言い張ってきた。プリゴジン自身もワグネルとの関わりはおろか、その存在さえ認めていなかった。

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