ウクライナは数十年にわたってNATOとロシアの間で「宙ぶらりん」の状態に置かれていた[2023年7月12日、ウクライナ・キーウ]

 2023年7月11~12日のヴィリニュスでのNATO首脳会合は、ウクライナのNATO加盟問題については、ほとんど前進をすることができなかった。それどころか、議論のすれ違いを含めて、この問題の困難さが浮き彫りになった。(下)では特にウクライナの加盟条件に関する議論を出発点に、ウクライナを加盟国として受け入れるにあたってのNATO側の課題について分析する。

加盟「条件」とは何か

 NATO加盟には条件が存在する。これは当然のことである。NATOが、一つの加盟国への攻撃を全体への攻撃とみなして相互支援することを誓った集団防衛の同盟である以上、誰でも入れるわけではないのも驚くべきことではない。(上)で触れたように、NATOは1995年の段階から、加盟にあたっての条件に言及してきた。

 加盟条件には、大きく分ければ政治や価値の側面と軍事的側面が存在する。前者については、民主制度の確立が大前提となり、軍との関係では文民統制や軍事予算の透明化を含む、国防部門改革が条件になる。これには汚職対策も含まれる。バイデン大統領やジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官もこれらに言及している。

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