オバマ政権が新設する「サイバー司令部」

執筆者:春名幹男2009年7月号

 外交と経済を統合した「米中戦略・経済対話」の七月開催を正式に決め、「G2」に向けて緊密化を深める米中両国。 だが、サイバー空間では両国はまるで、交戦状態か、と思わせるほど緊迫している。 米国家情報長官(DNI)オフィスのジョエル・ブレナー国家防諜部長が今年四月三日テキサス大学オースチン校で行なった講演で中国からのサイバー攻撃の例を次々と明らかにした。 (1)中国側とビジネス交渉をしていた米大手企業が、最終的な譲歩案をハッカーに盗まれた。 (2)米国の情報セキュリティ専門家の個人携帯情報端末が北京で「無線標識」に侵入され、行動を逐一伝えられて、米国内のサーバーまで荒らされた。 (3)米情報セキュリティ企業が中国人グループを雇用したところ、中国政府と関係を持つハッカーがその中に潜入していた。 (4)米企業情報部門の中国系米国人幹部が中国情報機関工作員にスパイになれと強要された。 ブレナー部長によれば、中国のハッカーは国防総省や送電網、航空管制システム、水道供給システム、金融ネットワークにまで侵入している。 部長は「中国政府は米国の金融システムを麻痺させたいと考えるか」との問いには「ノー」と断定。「中国は米国に巨額の投資をしているから」と説明した。送電網も当面は標的にされないだろう。だが「台湾有事」の事態では話は全く違う、と言うのだ。

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