2022年9月、日本海で大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」に参加したロシア海軍のフリゲート艦「マルシャル・シャポシニコフ」 (C)EPA=時事

 戦争が長期化し、ウクライナ東部・南部での激しい地上戦は双方に甚大な消耗をもたらしている。言うまでもなくウクライナ戦争の主役は地上軍であるが、次いで重要な役割を果たしているのは航空戦力である。ドローンを含む航空戦力は地上戦における近接航空支援、あるいは相手の戦意喪失をねらった都市部の縦深攻撃に使用されている。

 その一方で海洋戦力=シーパワーの存在感は薄い。2022年4月にスラヴァ(Slava)級ミサイル巡洋艦モスクワ(Moskva)がウクライナ製ネプチューン対艦ミサイルとされる攻撃により撃沈されたこともあり、ウクライナ沿岸部におけるロシア水上艦艇の作戦行動は低調であると考えられる。時折ロシア黒海艦隊がオデーサなどウクライナ沿岸部への攻撃を実施した、といった報道もみられるが、それらはあくまで散発的なものであり、戦局を左右するようなインパクトをもたらしているわけではない。

 そのかたわらでロシア海軍は黒海の海上交通をコントロールしており、穀物をはじめウクライナ港湾からの積荷を積載した船舶の航行を阻害している。これはそもそもウクライナが沿岸部を超えた外洋に発揮できる海洋戦力(大型水上艦艇・潜水艦・捜索/対艦攻撃機など)を有していないからであり、被攻撃の脅威が低いことを考えれば比較的容易なオペレーションである。

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