これまでに36カ国、のべ320社・機関がインドに衛星打ち上げを委託している[インド南部アンドラプラデシュ州スリハリコタの宇宙センターから発射されたチャンドラヤーン3号搭載のロケット=2023年7月14日](C)AFP=時事

 G20議長国として途上国・新興国のリーダーを標榜するとともに、先進国グループ入りを目指すインドが、宇宙開発を急ピッチで加速させている。8月下旬には月の南極付近に無人探査機を軟着陸させるという高難度なミッションに成功。9月2日には初の太陽観測衛星も打ち上げた。

 インドは早ければ来年末にも旧ソ連や米国、中国に次ぐ有人宇宙飛行に挑戦する予定で、その先には金星探査船の打ち上げも計画している。一連の国家プロジェクトによって、月の資源探査や太陽コロナによる地球の磁場への影響などに関する研究を進め、衛星の受託打ち上げや衛星画像の販売といった宇宙ビジネスの振興を図る。その一方で、宇宙開発を通じて技術を世界にアピールする「国威発揚」と国民の求心力獲得という政治的な狙いも見えてきた。

世界で4カ国目の月面着陸

 宇宙開発を担う政府機関であるインド宇宙研究機構(ISRO)が打ち上げた月探査船「チャンドラヤーン(サンスクリット語で月への乗り物という意味)3号」が8月23日、月の南極近くへの軟着陸に成功したというニュースは、多くのインド人を歓喜させた。2019年に打ち上げたチャンドラヤーン2号は、降下時の速度制御に失敗し月面に激突した。ロシアが8月11日に打ち上げた月探査船「ルナ25号」も降下制御に失敗し、4月には日本の宇宙ベンチャー企業「アイスペース」による月面着陸も失敗に終わっている。

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