民間企業育成で新たな段階に入った「宇宙安全保障」米中競争最前線

執筆者:青木節子 2021年5月31日
現在世界唯一のロケット技術は、イーロン・マスク氏率いるSpaceX社の「ファルコン9」に搭載(写真・同社HPより)
旧ソ連との苛烈な競争を制し、世界一の宇宙大国であり続ける米国と、肉薄する中国。米国は、国家と民間企業という“二枚腰”で中国の挑戦に対抗――その最新情勢は。

 宇宙は地球上の公海と同様、国家による領有が禁止されており、すべての国にとっての自由で平等な利用が保障されている場所である。公海の自由には、航行や漁業だけではなく、武力行使に到らない軍事利用の自由が含まれており、公海上で軍事演習を行うことは国際法上合法である。この点をわたしたちはそれほど疑問に思うことはない。

 しかし、宇宙利用の自由というときには、軍事とは無関係な人類の夢とロマン、知のフロンティアの拡大といったイメージが共有されているように思える。古くは米国のアポロ計画による有人月面着陸。現在ならば高度約400キロメートルで運用中の国際宇宙ステーションでの日本人宇宙飛行士の活躍や、小惑星のサンプルを採取して地球に帰還した日本の探査機「はやぶさ」1号・2号の快挙などが、宇宙の探査・利用の中核のように考えられていないだろうか。

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執筆者プロフィール
青木節子(あおきせつこ) 1959年生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科教授。専門は国際法、宇宙法。1983年慶應義塾大学法学部卒業、1990年カナダ・マッギル大学法学部附属航空・宇宙法研究所博士課程修了(法学博士)。防衛大学校などを経て、2016年より現職。2012年より内閣府宇宙政策委員会委員。著書に『中国が宇宙を支配する日』(新潮新書)、『日本の宇宙戦略』(慶應義塾大学出版会)、『宇宙六法』(共編、信山社)など。
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