イスラエルかパレスチナかという単純化された構図に、アイデンティティ政治が発露して、政治的・社会的分断がさらに深まっていく可能性がある[イスラエルとハマスの紛争に抗議するデモで対峙する親イスラエル派(左)と親パレスチナ派(右)=2023年10月24日、アメリカ・アトランタ](C)EPA=時事

引き裂かれるアメリカの世界戦略(「上」より続く)

■正統性に向けられる国内外の批判が招くもの

 第二に、アメリカの国際的な正統性や道義性が、再びそれらに批判的なナラティブに晒され、外交的な影響力を失っていく可能性がある。換言すれば、アメリカの理念や世界観を共有しない新興諸国や途上国、いわゆるグローバルサウス諸国は、イスラエルを強く支援するアメリカに対して疑念を強める。ロシアによるウクライナ侵攻の際に、グローバルサウス諸国は、ロシアの侵略を非難しつつも、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大が背景にあるとするロシアの言説にも理解を示した。今回のハマスのイスラエル攻撃に関しても、例えば南アフリカやインドネシア、マレーシアなどは、ハマスの暴力を非難しつつも、その背景にはこれまでのイスラエルによるパレスチナ政策があるとする立場や見解を表明している。グテーレス国連事務総長もハマスに関する発言でイスラエルの反発を招いて物議を醸した。

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