取り残された前線州――ヘルソンへの旅

執筆者:国末憲人2024年6月23日
ヴィソコピリヤ村で占領時の状況を語る村人たちと弁護士のアキーレ・カンパーニャ[右]、元知事のアンドリー・プティロウ[右から2人目] (筆者撮影、以下すべて)

 ロシア・ウクライナ戦争は、北部から東部にかけての前線が最近、緊迫化している。

 1つの焦点となっているのは、ウクライナ第2の都市、東部ハルキウをにらんだロシア軍の攻撃である。ハルキウはロシア国境から40キロ程度しかなく、2024年5月から国境近くの町村にロシア軍が侵入し、戦闘が繰り広げられたほか、ロシア軍による住民虐殺も起きているようである。ハルキウの街自体もミサイルやドローンによる激しい攻撃にさらされ、多数の犠牲者が出た1

 東部のドネツク州でも、2024年に入ってロシア軍が攻勢を強め、要衝チャシブヤールの攻略を目指した作戦を繰り広げた。

 これに対し、南部戦線では最近、目立った動きが伝えられない。この地方では2022年2月、クリミア半島から侵攻したロシア軍がヘルソン州のほぼ全域を制圧したが、その年の11月に同州のドニプロ川西岸をウクライナ軍が奪還した。その後、ウクライナ軍はさらなる反転攻勢を試みているものの、大河ドニプロに阻まれ、状況は大きな進展を見ていない。この間、2023年6月にはドニプロ川のカホフカ・ダムが破壊されて同州が広範囲にわたって浸水する出来事もあったが、戦況を大きく変えるには至っていない。現地からの情報も、最近は少なくなっていた。

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