[随時更新]戦略視点で捉えるウクライナ最新戦況マップ (1)

ハルキウ州での「緩衝地帯」構築を防ぐ「欧米兵器による越境攻撃」容認

執筆者:岩田清文 2024年6月5日
エリア: ヨーロッパ
ロシア軍は国境の北側に約5万人を待機させており、引き続き北部正面にウクライナ軍戦力を引き付ける狙いがあると見られる(筆者の分析に基づき編集部作成)
5月上旬からのウクライナ北部ハルキウ州への攻撃について、プーチン大統領はウクライナ領内に緩衝地帯を構築するためだと表明している。ロシア軍はこれまで、ウクライナ国産兵器の射程(約40㎞)圏外となる自国領内からミサイルを発射してきた。ウクライナが欧米から供与された兵器を越境攻撃に使用できれば、ロシア軍の策源地は現在より数十~数百㎞も後退することになる。ロシアによるハルキウ州攻撃には今後の東部戦線での本格攻勢を支える狙いもあると見られるが、結果として欧米諸国の方針転換に繋がった。【岩田清文・元陸上幕僚長が戦略視点で捉えるウクライナの戦況を随時更新の地図で解説】

 5月10日、ロシアはウクライナ北部のハルキウ州に対し攻撃を開始した。本格的な攻勢を5月下旬~6月にかけて、東部のルハンシク州、ドネツク州に対し東方向から行うだろうと予測されていた時期であったことから、おそらく、ウクライナ軍を北部に引き付け、東部の主たる作戦を有利にする攻撃と推測できた。また攻撃の時期的な観点では、英紙エコノミストによれば、これは予定よりも5~6日早めての攻撃であり、米国の兵器支援が6カ月ぶりに再開され、ウクライナの前線に届く前に攻撃を仕掛けたと分析している。

 この攻撃が、十分な戦力をもってウクライナの内部まで侵攻していれば、東部で防御しているウクライナ軍の背後に廻ることになるため、戦況は大きくロシアに有利に傾いたかもしれない。しかし、ウクライナ軍の敢闘に加え、ロシア軍の戦力集中不足の側面もあり、攻撃進展は14日以降減速した。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
岩田清文(いわたきよふみ) 元陸上幕僚長。1957年、徳島県生まれ。79年、陸上自衛隊に入隊(防大23期)。第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て、2013年、第34代陸上幕僚長に就任。16年に退官。著書に『中国、日本侵攻のリアル』( 飛鳥新社)、『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』 (新潮新書)、『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』(新潮新書)、『中国を封じ込めよ!』(飛鳥新社)、『君たち、中国に勝てるのか 自衛隊最高幹部が語る日米同盟VS.中国』(産経セレクト)。
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